クリムト展2019感想
絵画鑑賞は私にとって「この人いいな、素敵だな」と思った人に会いに行くのと一緒の感覚。気に入った絵の前で対話するように向かい合い、全体を眺めたあと、細部の色使いや筆のタッチを素人なりに見ていると、優に100年前の作品が描かれた時代に誘われる気がして気持ちが高まる。
「ユディトI」
「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」
「女の三世代」
やはり、代表的な作品はどれも圧巻、素晴らしい。
また、絵だけでなく、額縁もクリムトがデザインしたというものがいくつもあり、どれも独創的で当然のことながら絵ともぴったり呼応して引き立て合っていて、とても美しい。
それにしても、クリムトは本当に女性が好きだったんだなぁ。
美しさ、優しさ、柔らかさ、だけでなく、生、老、病、死、強さ、残忍性まで…、あらゆる質を内在させている女性の持つ女神性が、それぞれの絵で見事に表現されていて、実物を見ると強く伝わってくるようで感動する。
また、ウイーン大学から依頼された天井画で2年後に提出した下絵が物議を醸し、結局ボツになってしまったという…「医学」「法学」「哲学」という3つの絵は、どれもその本質が表現されていて素晴らしく、美しいと感じた。
同時に、確かに一般受けはしないかも…とも。
特に「医学」がすごい。
さらに、三方向の巨大な壁画
「ベートーベン・フリーズ」
ベートーベン交響曲第九番に着想を得たこの作品を、音声ガイドで第九を聴きながら見ることができたのは贅沢な気分になれた。
私の父が合唱をやっていたので第九には子供の頃から馴染みがあったし、私自身も第九の合唱経験があるため思い出すこともあり、感慨深かった。
第九のストーリーをこんなに迫力ある美しい壁画で表現できるクリムトの才能は、本当に素晴らしいとつくづく思う。
美味しい食べ物を食べるとお腹いっぱいで満足するけれど、美しい絵をたくさん見たときも、それに近い、満ち足りた豊かさを得ることができる。
今後、これだけの作品が揃うチャンスはなかなかないらしい。
もうすぐ終わっちゃうけど(10/14まで)、良かったのでお薦め。